トヨタ自動車が6月24日公表した有価証券報告書によると、豊田章男社長の役員報酬が4億4200万円だったことが明らかになった。
世界の一流企業のCEOはもとより日本の代表的な企業の役員報酬の数字もトップ10入りするような人と数字は良く知られているせいか、ネットの反応は「安すぎる」というリアクションを起こしている。
売上高30兆円を誇る世界のトヨタのトップの年収としては低すぎるという感想を抱く人が多く、正直比較論で言うと、挙げた業績には見合わず、もっと低い業績でその何倍もの役員報酬を受け取る人も多くいる。
豊田章男社長の役員報酬が4億円に留まる本当の理由とは何かを調べてみた。
また、日本や世界の一流企業の年収ランキングを参考に、年収の世界標準とはこんなに高いという事実も参考までにとりあげた。
豊田章男社長の役員報酬が4億円の本当の理由は?
役員報酬はいかにして決まるのか?
会社が報酬として支払うお金には、「役員報酬」と「従業員給与」の2種類がある。
役員に支払われるのが役員報酬で、考え方としては「仕事への対価として支払う報酬」という点で「従業員給与」と変わらない。
しかし役員報酬に関しては、会社法や法人税法で厳しいルールが定められており、
1.定款に記載する
2.株主総会での決議を行う
という手順を踏むのはもちろん、役員報酬を決めるポイントの1つとして重要なことは、「同業種や同規模の他社と比較して高額過ぎないようにする」ということで、そうでなければ税務署が認めないという事情がある。
しかし、豊田章男社長の役員報酬の場合は、次項でふれる「同レベルの企業の役員報酬」と比較しても「安すぎる」という問題点がある。
それはなぜかについて、理由を考えていく。
「年収1億円超」の上場企業役員ランキング
東洋経済オンラインが公表した「年収1億円超」の上場企業役員ランキングを見ると、2020年9月15日時点の資料で、1位が24億円超、2億円以上の報酬は201人となっている。
ちなみにこのときの豊田章男社長(トヨタ自動車)のランキングは39位で、役員報酬額は4億④900万円である。
役員報酬総額で10億円を超すのはランキングの10位までで、10人が10億円以上の役員報酬を得ている。
- トヨタ自動車 29兆9299億円 フォロー
- 本田技研工業 14兆9310億円 フォロー
- 三菱商事 14兆7797億円 …
- 日本郵政 11兆9501億円 …
- 日本電信電話 11兆8994億円 …
- 伊藤忠商事 10兆9829億円 …
- ENEOSホールディングス 10兆117億円 …
- 日産自動車 9兆8788億円
これで見ても、トヨタ自動車の売上高の数字は圧倒的であり、売上高の規模で言うと2分の1程度の三菱商事の社長の役員報酬が25位で5億3100万円、伊藤忠商事会長の役員報酬が20位で6億③200万円という数字になっている。
また、このときのトップ3の動向を見てみる。
1位は、セブン&アイ・ホールディングス取締役で、アメリカのセブン-イレブンのトップであるジョセフ・マイケル・デピント氏だった。昨年の2位から上昇したものの報酬は24億7400万円と、昨年度の29億1300万円から4億円以上減少している。
続いて2位は、住友不動産の前会長である高島準司氏がランクイン。基本報酬6500万円に加えて、2019年9月に死去し退任した際、過年度に支給が留保されていた退職時報酬21億9400万円が支払われた。
3位は、ソフトバンクグループの副社長であるマルセロ・クラウレ氏の21億1300万円(昨年は18億0200万円)。昨年32億6600万円で1位だった、同グループ副会長のロナルド・フィッシャー氏は、6億8000万円で16位に順位を下げた。
引用元:東洋経済オンライン
上記ランキングのトップ3に登場している企業の売上高のざっくりした数字をあげると、1位のセブン&アイ・ホールディングスで5兆円、2位の住友不動産は1兆円、3位のソフトバンクは5兆円と、売上高ではトヨタ自動車に遠く親ばない。
もちろん、役員報酬を決める要因は売上高だけでなく、「利益」や「業種・業界の事情」もあるとは思うが、それにしても「売上高30兆円」のトヨタ自動車社長の役員報酬のランキングと報酬額の低さは際立っている。
豊田章男社長の役員報酬が4億円の本当の理由は?
過去にイチローも指摘したといわれるトヨタ自動車社長の年収が低すぎるという印象は多くの人がもっていて、それに対する豊田章男社長なりの回答が見て取れる記事を引用する。
トヨタ自動車が6月24日公表した、2021年3月期の有価証券報告書によると、豊田章男社長(65)の役員報酬は前年の4億4,900万円から1.6%減の4億4,200万円だった。コロナ禍による営業利益の減益などが影響し、4年ぶりに減少した。
同社役員で報酬が最も多かったのは、昨年6月に取締役を退任したディディエ・ルロワ氏で、前年比17.1%増の14億5,100万円だ。1億円を超えたのは、豊田社長、ルロワ氏を含めて7人だった。
とはいえ、日本株では2位のソフトバンクグループの14兆円におよそ2倍の差をつけ、株式の時価総額では30兆円と日本一。トヨタの22年3月期の連結営業利益は会社予想が前期比14%増の2兆5千億円と、コロナ禍をものともしない勢いだ。
そんな企業のトップらしからぬ報酬額に、「安すぎでは」という声が上がっている。なかには、年間10億円以上の報酬を受け取りながら、巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件を起こした日産自動車の元会長・カルロス・ゴーン被告と比べる声も……。
《売上30兆円で経済を回す企業のトップとしては安いなぁ》 《世界有数の企業の社長の報酬にしては、配当収入があるにせよ、少な過ぎる》 《多額だけど対利益なら、もっと貰っててもおかしくないよな…》 《日産とどうしてここまで違うのだろうか》 《日産の社員、関係会社の人たちは悔しいだろうな》
実は、豊田章男社長の役員報酬が“安すぎる”という指摘は以前からあった。2018年12月、元大リーガーのイチロー(47)が、豊田社長らとの鼎談のなかで、こう話していた。
「給料、安くないですか? 30億円くらいもらってくださいよ」
こう迫ったイチローに豊田社長は「“燃費のいい社長”と言われています」と返し、「ひとりでやっているわけじゃないんですよ、私は。責任はたぶん、ひとりで取るんでしょうが、その“責任代”は、多くの人が納得できる金額であってほしい。その額は、今のところわからないんですよ」と語っていた。
さらに、24日に開示した有価証券報告書には、ウーブン・プラネット・ホールディングスというソフトウェアや自動運転技術の開発などを行う子会社に、豊田社長が私財を50億円投じるという記載が話題を呼んでいる。
トヨタ自動車の創業家一族の生まれで、同社を率いる章男氏が社長に就いてから12年。日本一の企業トップがやることは、やはりひと味ちがう――。
引用元:dmenuニュース
また、下記の意見も豊田章男社長の理念や哲学、人柄を物語り、納得がいく。
「世界基準で比べれば、もっと貰って良いはず。でも、豊田社長は貰わない。そこが、世界のTOYOTAの社長。従業員とその家族を守り、自社のみならず、日本の自動車業界全体を考える姿勢に頭が下がります」
「創業家でこれだけ評判の良い人も珍しいのではないかと思います。各署への影響を考えると報酬はもっと多くて良いと思いますが、ご本人の意思もあるでしょうから周りがとやかくいうことでもないと思います」
「自動車業界全体の事を考えてくださってるし、日本の事も考えてくださってる。もっと貰っても良いんだけど、そこもしっかり考えておられるのだろう。世界に誇れる経営者だと思う」
「資産なんぞ自社株どころか会社そのものが資産ですが、それをどう活用して日本、世界に貢献できるかを毎日考えては試行している。そんな人でしょう」
引用元:ライブドアニュース
一流企業トップ 年収の世界標準はこんなに高い!
役員報酬世界ランキング
(引用元:#SHIFT)
上記の図表は東京商工リサーチの有価証券報告書から順位づけを行った役員報酬ランキング票になっている。
役員報酬額のトップはソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長で、32億6600万円(前年20億1500万円)だった。2位が新日本建設の金綱一男会長で23億4300万円、3位がソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長COOで18億200万円(前年13億8200万円)、4位が武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長で17億5800万円(同12億1700万円)と続いた。
引用元:#SHIFT
トップ5に4人の外国人が途上している点が注目された。
また、トヨタ自動車と同業種の日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が16億5200万円(同28億6900万円)で5位だったことも注目された。
なお、米国の企業トップであるCEOに特に高額な役員報酬を得ている人物がいることもよく話題になる。
「米国会社四季報」によると、ランキング1位のCEOの役員報酬額は日本円に換算して56億円に及ぶことがとりあげられたことがあり、この数字ばかりはカルロス・ゴーン氏の数字も遠くかすむレベルと言われている。
豊田章男社長の役員報酬はトヨタ自動車のスタンダード
米国の企業トップの役員報酬が跳びぬけて高いのは、2018年から「長期業績報酬体制」に移行していることもある。
今後の長期的な見通しで起業の時価総額をいくらにしたのか、収益・利益目標の達成の度合いで、その企業トップ在任時に受け取れる役員報酬額に日本的な常識は考えられず、上限がないに等しいい。
完全に業績連動性となった役員報酬の考え方だが、この理念に最も合っていないのが豊田章男社長の自身の役員報酬に対する考え方である。
「責任はたぶん、ひとりで取るんでしょうが、その“責任代”は、多くの人が納得できる金額であってほしい。」という理念に基づく限り、業績を上げたら挙げただけの報酬をゲットしようという発想からは遠くなる。
豊田章男社長の役員報酬が4億円の本当の理由:世界標準とも比較(まとめ)
2021年公表されたトヨタ自動車の豊田章男社長の役員報酬が4億円であることがネット上で「安すぎる」という反応を生み出している。
豊田章男社長の役員報酬が4億円であることの本当の理由とは何かを探り、「年収1億円以上」の上場企業役員ランキングや米国の企業トップを中心とした世界標準がいかに高いかも見たうえで、豊田章男社長の役員報酬に対する理念や哲学の反映があることにもふれた。