ヴィッセル神戸がブラジルのフラメンゴから大物の補強を行った。
U-20(20歳以下)ブラジル代表の経験を持つFWリンコン(20)が加入することになったのだ。
名門フラメンゴの下部組織出身で優れた得点センスと高度なテクニックが魅力の世界が注目するアタッカーは当然のように複数のチームの争奪の的となり、最終的に神戸に所属となった。
選手としてまだ20歳と若く、これからさらにすごい選手にブレークするポテンシャルも大きな魅力である反面、素行の良くない「問題児」であるとの風評もあり、それがフラメンゴが進んでリンコンを手放した理由であるとも言われている。
一方、神戸としては、その問題児をどうしても獲得したかった理由は何かを調査しまとめた。
将来性豊かな問題児リンコン
リンコンの将来性と市場価値
リンコンと言えば世代別のブラジル代表にも名を連ねる若手の大物だ。
MLSのFCシンシナティと神戸による激しい争奪戦が繰り広げられたあげく、最終的にJ1への移籍がきまって世界の注目を集め、大きく報道された。
神戸が交渉担当を現地に派遣してまで獲得にかかった逸材は確かに大きな市場価値を持つ選手だ。
実力、人気度、ポテンシャル等を総合的に見たリンコンの市場価値を金額に換算すると540万ユーロ(約6億7500万円)という金額になる。
これは、2018年に神戸に入団してから孤高のトップに君臨してきた元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタの320万ユーロ(約4億円)を凌駕する数字となる。
まだ20歳という年齢からくるポテンシャルの大きさも当然、市場価値算出の根拠となっている。
潜在能力は計り知れず、選手としての実績も十分で2917年のU-17ブラジル代表としてU-17南米選手権では8試合5得点と優勝に大きく貢献した。
U-17ワールドカップではグループリーグ全3試合で得点を記録した。これまでブラジル1部リーグで37試合4得点を記録している実績と、まだまだ成長途上ともいえる将来性は、ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)とともに「ブラジルの未来を担う選手」と高く評価されている。
問題児リンコンのパフォーマンス低下
リンコンが日本では10年に一度の逸材のように評価される一方、世界の味方は必ずしも高い評価ばかりではない。
というのも、リンコンがここ数年伸び悩んでいる根拠となる明確な記録があるからだ。
リンコンがスタメンでプレーしたのはここ4年間で11試合のみ。途中出場が52試合で、そのうちの33回は後半の30分以降にのみプレーしている。
このことは、リンコンがほとんどの試合で15分以下しかプレーしていないことを物語る。
トップチームに所属してスタメン最前線のレギュラーとして扱われたのが明らかに早すぎた結果であり、そのためにリンコンは伸び悩みをきたしているという。
フィジカル面でもメンタル面でも豊富な伸びしろを持っていながら伸び悩みは深刻でありという。
素行面でも問題があったようで、11月半ば、リンコンが酒を飲んでパーティーで騒いでいる動画がアップされてしまい、ペナルティとしてベンチからはずされるようになった。
交渉事は3人の代理人に任せているリンコンだが、彼を使わなくなったチームにリンコンの代理人がかみついたことでチームとリンコンの仲は決裂してしまったという。
フラメンゴはリンコンが20歳になる前ぎりぎりに(12月16日が誕生日)、トップチームから除名し、U-20チームに落とし、もはや修復不能な関係になった。
神戸への移籍が取り沙汰されるようになる前にこのようなぎくしゃくした関係になっていたのだ。
神戸が問題児のリンコンをどうしても獲得したかった理由は?
リンコンを抱えることの期待と不安
トップチームからの除名というフラメンゴの処置は当然、リンコン側が納得できるものではなく、リンコンは代理人を通じて国外移籍の道を模索するいおうになったのだ。
この争奪戦には当初欧州の複数のクラブが参戦し、後にJ1神戸とMLSのFCシンシナティの交渉にしぼられていった。
これから先リンコンと関わりたくないフラメンゴのとった措置は「レンタル」ではなく、「完全移籍」で放出する方針を打ち出した。
神戸が支払った移籍金は権利の75%で300万ドル(約3億1000万円)と3年で10分の1にまで低下した。神戸側も格安で交渉をまとめられたことになる。
最近数年間のリンコンのパフォーマンス低下は世界も承知しており、今後についても、プロフェッショナルとして本当に軌道修正できるか大いに不安とリスクがあるという目線で見ている。
一方、ネガティブな見方ばかりでなく、JI神戸へ移籍が決まったことでリンコンが望んでいた通りイニエスタと一緒にプレーすることで、潜在能力が開花しする可能性も秘めているとみている。
神戸が問題児のリンコンをどうしても獲得したかった理由は?
J1の中では「スター軍団」とか「タレント軍団」とか言われる神戸はこれまで何人もの大物プレーヤーとの入団交渉をまとめてきた経験がある。
「問題児」の風評はあっても、ブラジルだけでなく世界の逸材リンコンを獲得し、チームとして使いこなす自信があったに違いない。
ルーカス・ポドルスキやダビド・ビジャ(現役引退)、アンドレス・イニエスタといった世界的なスターも確かに神戸の風土が合っていた。
戦力面では、2021年を迎えるにあたり、神戸には不安要素があった。得点能力のずば抜けたビジャと、アタッキングサードで違いを作れるポドルスキ、空中戦が売りのウェリントンの3人が抜けたことで、前線の圧倒的な戦力低下とそれに伴う不安である。
ドウグラスの加入は心強いし、イニエスタやフェルマーレン、西大伍ら30代のベテラン選手も健在だが、前線と中盤の選手層は、過密日程を戦う上でウィークポイントになる可能性がある。
若くてポテンシャルが豊かで世界的な知名度のアタッカー獲得に動くとしても不思議はないだろう。
神戸が問題児のリンコンをどうしても獲得したかった理由は?(まとめ)
リンコンには世界が認める将来性と市場価値がある反面、ここ数年のパフォーマンス低下という実績面の不安、素行の悪さや「問題児」というレッテルを貼られ降格させられた最近数年間のマイナス要因もある。
J1神戸のチーム事情として、マイナス要因やリスクはあってもリンコンに賭けて、この世界的なアタッカーを獲得にいった動機、すなわち、どうしてもリンコンを獲得したかった戦力的な要因をまとめた。